日本外科系連合学会誌
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高齢者大腸癌の特性と治療方針
西村 元一二宮 致北川 裕久伏田 幸夫藤村 隆萱原 正都清水 康一太田 哲生三輪 晃一
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キーワード: 大腸癌, 高齢者
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1999 年 24 巻 5 号 p. 720-724

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抄録

過去16年間の大腸癌手術症例525例を80歳以上の大腸癌35例 (A群), 70歳以上79歳以下の141例 (B群) および70歳未満の349例 (C群) の3群に分け検討を行った。A群では85%の症例で術前に何らかの併存疾患を有しており, PSも不良であったが, 術後合併症発生率および在院日数は他の2群と比較して差は認められなかった。またA群とB, C群では術式およびリンパ節郭清範囲も若干差を認めたが, 根治性には差を認めなかった。またA群の死亡例では有意に他病死の症例が多く認められた。以上より, 80歳以上の高齢者においても原則としては系統的なリンパ節郭清を伴った根治術を行うべきと考えられるが, 手術に伴う合併症や手術自体の障害によるQOLの問題, および患者の予後を規定する臓器障害や疾患の有無を考慮に入れ, 症例に適した術式を選択すべきと考えられた。80歳以上の大腸癌35症例について80歳未満の症例と比較検討し以下の結論を得た。1. 高齢者では85%の症例で術前に何らかの併存疾患を有していたが, 術後合併症発生率および在院日数は70歳代, 70歳未満と比較して差は認められなかった。2. 高齢者群の術式は直腸切断術など人工肛門を造設する例が多く, リンパ節郭清範囲も手控えられた傾向を認めたが, 根治性には差を認めなかった。3. 死因としては高齢者群では他の2群と比較して他病死例を多く認めた。以上より, 80歳以上の高齢者においても原則としてはリンパ節郭清を伴った根治術を行うべきと考えられるが, 手術に伴う合併症や手術自体の障害によるQOLの問題, および患者の予後を規定する臓器障害や疾患の有無を考慮に入れ, 症例に適した術式を選択すべきと考えられた。

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