1999 年 24 巻 5 号 p. 787-791
臨床の場では膵小嚢胞を契機に小膵癌が発見されることがある。最近, 著者らは小嚢胞を合併する上皮内癌2例を経験し, 主膵管の変化と嚢胞の両者の位置関係と周辺上皮の性状について検討した。症例1 (75歳・女性) 。上皮内癌は貯留嚢胞の乳頭側の近接膵管に存在した。癌部主膵管にはERP像では変化はなかった。症例2 (72歳・男性) 。上皮内癌は主膵管狭窄部および貯留嚢胞の乳頭側の近接膵管に存在し, 嚢胞内上皮に一部進展した。狭窄と嚢胞は随伴性膵炎による主膵管壁の増殖に起因した。ERPでは癌部を同定し得なかった。2症例とも癌および周囲膵管上皮の粘液産生には乏しかったが, 2次的に貯留嚢胞を生じた。膵癌はたとえ膵管上皮内に限局していても尾側膵管への影響があり, 貯留嚢胞・狭窄を生じうる。また貯留嚢胞・狭窄がみられたときは, 常にその主膵管乳頭側に病変の主座があることを考慮するべきと考えられた。