2000 年 25 巻 1 号 p. 97-100
症例は67歳, 女性。主訴は発熱と左胸部痛である。血液生化学検査では白血球, CRPが高値を, また軽度の貧血と胆道系酵素の軽度の上昇を認めた。腹部超音波検査では肝左葉外側区域に直径5.0×3.8cm大の境界不明瞭, 内部不均一な低エコー領域を認め, 腹部単純CT検査では同部に低吸収陰影を, また造影CTでは周囲がリング状に造影される腫瘤影を認めた。肝血管造影検査にて異常所見は認めなかったが悪性腫瘍を否定できず, 肝左葉外側区域切除術を施行した。肉眼的に腫瘍は黄白色, 充実性を呈し, 組織学的には全体に線維性結合組織の増生を認め, 中心部では好中球, 泡沫細胞, 形質細胞, リンパ球の浸潤が混在してみられ, inflammatory pseudotumor (以下, IPT) と診断された。肝のIPTはまれな疾患で悪性腫瘍との鑑別が困難である。われわれは, IPTの1例を経験したので文献的考察を加えて報告した。