2000 年 25 巻 5 号 p. 732-738
1975年11月から1995年12月までに埼玉県立がんセンター腹部外科で施行した低位前方治癒切除症例のうち, 局所再発をきたした13例 (局所再発群) と再発を認めない161例 (非再発群) を対象とし, 局所再発に関する危険因子を臨床病理学的に検討した。局所再発群の占居部位はRs6例, Ra3例, Rb4例であった。局所再発群のリンパ管侵襲 (ly) はly00%, ly1 (+) 53.8%, ly2 (+) 38.5%, ly3 (+) 7.7%で, 非再発群に比べてlyOおよびy (+) (ly2 (+), ly3 (+)) において有意差が認められた (p<0.01, p<0.05) 。局所再発群の静脈侵襲 (v), リンパ節転移 (n) は, 非再発群に比べて高率であったが, 有意差はなかった。リンパ節転移の占居部位別の検討では, nOはRs, Raでそれぞれ16.7%, 66.7%, Rbでは全例, nOであったが, 局所再発が認められた。以上より, リンパ管侵襲は局所再発の重要な危険因子と考えられた。低位前方切除術に際しては, 十分なリンパ節郭清, 直腸壁の周囲組織の完全切除が必要と思われた。