日本外科系連合学会誌
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Cantlie線切離によって術野確保を行った, 肝門部胆管癌に対する姑息的肝門部胆管切除術の1例
布目 雅稔野浪 敏明大輪 芳裕有川 卓伊藤 暢宏鈴村 和義金光 泰石成瀬 隆吉
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2000 年 25 巻 6 号 p. 906-909

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抄録

肝門部胆管癌に対する, 肝切除を伴わない肝門部胆管切除術は, 肝門部胆管切離や胆管空腸吻合の際, 視野の展開に苦慮することがある。われわれはCantlie線で肝を切離して肝門部を大きく展開し充分な視野の下に胆管切離, 胆管空腸吻合を行った症例を経験したので報告する。症例は71歳, 女性。肝門部胆管癌で左肝管B4分岐部, 前区域胆管B5, B8分岐部, 後区域胆管分岐部まで癌浸潤が疑われ, 拡大肝右葉切除が必要と考えられた。手術は十二指腸側総胆管の切離断端で癌陽性であったため拡大肝葉切除を行わず姑息的切除に切り替え, 肝門部胆管切除の方針とした。Cantlie線の尾側約1/3を肝門部方向へ肝を切離し, 肝内各胆管枝の充分な視野を得た。B2/3, B4分岐部, B5, B8分岐部, 後区域枝でそれぞれ胆管を切離した。胆道再建は左1カ所, 右2カ所で胆管空腸吻合を行った。本症例ではCantlie線切離による視野の確保下に姑息的に肝門部胆管切除を行ったが, 本法にて充分な術野が得られ, 手術を安全・容易に施行することができた。

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