日本外科系連合学会誌
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再発を認めながら長期生存が可能であった肝嚢胞腺癌の1例
上田 順彦根塚 秀昭
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2001 年 26 巻 1 号 p. 105-109

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抄録

再発を認めながら長期生存が可能であった肝嚢胞腺癌の1例を報告した。症例は50歳, 男性。S5, 8, 4bにまたがる嚢胞形成性悪性肝腫瘍の診断のもと手術を施行した。周囲肝実質を付けて嚢胞切除を施行したが, 門脈前区域枝との間で肉眼的に腫瘍は遺残した。嚢胞内腔は充実性部分と粘液を含有する嚢胞部分からなり, 組織学的には充実性部分と嚢胞上皮はすべて腺癌で, 肝嚢胞腺癌と診断された。また12b2リンパ節に転移を認めた。術後より化学療法として約5年間に渡りCDDP50mgの静注を38回施行し, 約6年間UFT-E2g/日を内服させた。術後2年1カ月目の腹部CTで後区域に不整な低吸収域を認めた。その後多房性嚢胞を形成しつつ肝実質内および肝外性に浸潤増大し, 一部は皮膚と瘻孔を形成した。この嚢胞内容も癌細胞が浮遊した粘液であった。上縦隔, 頸部リンパ節腫脹さらに両肺に空洞形成を伴う充実性腫瘤像も多数認めた。呼吸苦が増強し, 術後6年9カ月原病死した。

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