日本外科系連合学会誌
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肝虚血再灌流障害におけるウリナスタチン (UTI) 投与の有用性について
温阻血肝障害および同所性全肝移植モデルを用いて
小川 達哉藤原 利男小森 俊昭小林 謙之土岡 丘
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2002 年 27 巻 1 号 p. 88-96

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抄録

ウリナスタチン (UTI) には, 好中球エラスターゼ, 炎症性サイトカイン産生, 白血球の活性酸素産生抑制作用があり肝虚血再灌流障害に対し予防的効果があると考えられる。われわれは, この点を明らかにするために実験Iとしてイヌ温阻血肝障害モデルを作成し, aspartate aminotransferase (AST), alanine aminotranferase (ALT), lactate dehydrogenase (LDH) の推移を検討した結果, 有効性ありと考えられた。次いで実験IIとしてイヌ同所性全肝移植モデルを用いてUTIの効果を再検討した。評価は, 血液生化学的 (AST, ALT, LDH, 凝固線溶系), 病理組織学的方法で行った。また, 肝細胞傷害の指標の1つとしてアポトーシスの程度を検討した。その結果UTI群は, コントロール (CT) 群に比して, AST, ALT, LDHの値は, 有意に低値を示し (P<0.05), 病理組織学的検討においても肝細胞索の狭小化や断裂, 鬱血, ネクローシスが軽度であった。またアポトース陽性肝細胞の出現率も低い傾向を示した。このことによりイヌ同所性全肝移植モデルにおいても, UTIの予防的投与は移植肝の肝虚血再灌流障害を軽減させる効果があることが示された。

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