2003 年 28 巻 2 号 p. 266-270
症例は64歳, 男性。1999年6月2日早期胃癌の診断にて, 小開腹, 胃切開による粘膜切除術を受けた (M (mm), ly0, v0, LM (-), VM (-)) 。経過観察中にCEAの上昇を認めたため精査を行ったところ, 胃小彎のリンパ節腫脹を指摘され, リンパ節再発の診断で2001年7月31日幽門側胃切除術, D3郭清を施行した。病理結果は胃に遺残再発を認めないものの, 大動脈周囲リンパ節にまで転移を認めた。粘膜切除標本の追加切片で粘膜下へのリンパ管浸潤が確認され, 胃壁外のリンパ管浸潤あるいはリンパ節の微小転移が再発の原因であったと考えられた。胃癌取扱い規約に従った病理検索を行ったにもかかわらず, リンパ管浸潤を指摘しえなかった症例であった。分割であれば endoscopic mucosal resection (EMR) が可能と判断されていたことから, EMR可能病変の大動脈周囲リンパ節再発という稀な症例であるとともに, EMRの適応拡大に慎重に対処すべきと考えられ報告した。