2005 年 30 巻 2 号 p. 215-219
症例は38歳, 女性。発熱, 下腹部痛, 下痢を主訴に当院を受診した。細菌性腸炎を疑い, 絶食の上抗生剤による治療が行われた。しかし, 入院5日目には腹膜刺激症状が出現し, 血液検査では白血球31,200/μ1に増悪した。腹部CT検査では, 腹水の増加, 胆管壁の肥厚が認められたため, 汎発性腹膜炎の診断で試験開腹術を施行した。術中所見により, 骨盤腹膜炎の増悪による汎発性腹膜炎と診断した。腹水からはA群β型溶連菌が検出された。術前膣分泌物からも同菌が検出されており膣からの上行性感染が疑われた。自験例では, 骨盤腹膜炎を来しうる産婦人科的要因がなく, 起炎菌がA群β型溶連菌と稀であったため診断, 治療に難渋し汎発性腹膜炎を併発したと考えられた。