2006 年 31 巻 4 号 p. 671-675
症例は71歳の女性。高血圧で近医通院中, 検診の超音波検査で左頸部リンパ節腫大を認め, 当院に紹介となった。当院での超音波検査でさらに甲状腺左葉に径約5mm大の腫瘤を認め, リンパ節の穿刺吸引細胞診ではclass IIIb, 切除生検では乳頭癌の転移の診断で甲状腺原発が疑われた。甲状腺の穿刺吸引細胞診ではclassII, 頸部CTや甲状腺シンチでは病変を指摘できず, 全身精査で異常を認めなかった。診断的治療を兼ねて甲状腺左葉切除・頸部リンパ節郭清を施行した。病理診断では腫瘤は5×7mm大で, 一部に被膜浸潤を有する乳頭癌であった。甲状腺癌は微小であってもリンパ節転移や被膜浸潤を認めることもあり, 頸部リンパ節腫大を認めた場合は本症も念頭におく必要があり, 原発巣として甲状腺が疑われた場合は外科的切除を考慮すべきであると考えられた。