2022 年 35 巻 4 号 p. 313-318
症例は15歳の女性。自殺目的に自宅にあったバルプロ酸徐放剤(デパケン®R錠)計18 gを内服し,服用19時間後に意識障害を発症し搬送された。来院時血中アンモニア723 μg/dLと高値であった。意識障害に対し気管挿管のうえ活性炭投与を行い,持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration;CHDF)に加えカルニチン投与を開始した。バルプロ酸血中濃度,アンモニア血中濃度ともに第2病日には速やかに低下し,第3病日には意識が改善し抜管した。また,同日CHDFを離脱した。来院時血中遊離カルニチン12.1 mmol/Lとカルニチン欠乏を認めたが,4日間補充を行い第7病日には正常化した。とくに後遺症なく第9病日に自宅退院とした。バルプロ酸徐放剤の過量内服時には遅発性の意識障害に注意し,高アンモニア血症を伴う意識障害の発症に際しては,カルニチンの補充を考慮すべきである。