日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
左室内に発生した fibroelastoma の1手術例
角田 優福井 寿啓関 宏真鍋 晋下川 智樹高梨 秀一郎
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2009 年 38 巻 1 号 p. 83-85

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抄録

症例は76歳女性.1994年高度房室ブロックにてペースメーカーを留置された既往があり,その後近医にて経過観察されていた.近医での経胸壁エコーにて左室前壁の腫瘍を指摘されたため,精査目的に当院紹介となった.当院で施行した経胸壁エコーでは左室前壁の乳頭筋付着部やや心尖部寄りに16×9 mm大の乳頭状の腫瘍を認めた.腫瘍は有茎性であり,辺縁は不整,可動性は大きかった.画像上fibroelastomaが考えられ,塞栓症発症の危険性を考慮し,入院翌日,緊急手術を施行した.上行大動脈送血,上大静脈・下大静脈脱血により人工心肺を確立し,心肺停止下に大動脈を切開,大動脈弁越しに内視鏡にて左室内を観察し,乳頭筋基始部および左室心筋に付着している腫瘍を確認した.腫瘍を切除した後,再度内視鏡にて残存病変のないことを確認した.術後7日目の経胸壁エコーでは異常所見を認めず,経過良好であった.Fibroelastomaの左室内発生は非常に稀であるものの,塞栓症のリスクは高いため,緊急手術が必要と考えられた.大動脈弁越しに内視鏡を使用し,左室を観察する方法は有効であると考えられた.

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