抄録
69歳,男性.胸部レントゲン写真で心拡大を認め,当院を受診した.胸痛,胸部外傷や不明熱の既往はない.心エコーで重度の大動脈弁閉鎖不全を認めた.通常の胸部CTで無冠尖洞に限局性解離もしくは動脈瘤様の所見を認めたが,心拍動によるアーチファクトのためはっきりしなかった.冠動脈評価も含め心電図同期MDCTを施行,無冠尖洞に動脈壁欠損孔(6 mm)で交通した嚢状Valsalva洞動脈瘤(37 mm)を確認した.基部置換術を考慮していたが,心電図同期MDCT所見と術中の動脈壁の性状より判断して,大動脈弁置換術とともにパッチで欠損孔を閉鎖し,瘤内への血流を途絶させた.術後経過良好で,術後の心電図同期MDCTで瘤内への血流はなく,瘤内の血栓化を認めた.心電図同期MDCTは,基部の解剖や状態を把握するのに有用であった.