抄録
稀な先天性凝固因子欠乏症である第XI因子欠乏症を伴う腹部大動脈瘤症例を経験したので報告する.症例は67歳,男性.術前検査で活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の延長を認めたため,先天性第XI因子欠乏症と診断した.手術前日に新鮮凍結血漿(FFP)を6単位投与後,腹部大動脈人工血管置換術を施行した.術中出血傾向は認めず,術後もFFPを投与し,術後13病日に合併症なく退院した.第XI因子活性は検査結果判明まで数日を要するため,周術期においてはAPTT値が凝固因子活性値の指標になると考えられた.