日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
肺炎球菌を起炎菌とする急速拡大した感染性胸部大動脈瘤の1例
濱石 誠岡田 健志平井 伸司三井 法真
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2015 年 44 巻 3 号 p. 159-164

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抄録

症例は83歳,女性.尿路感染,化膿性椎間板炎および肺炎球菌による菌血症に対して入院のうえ抗菌薬治療を行っていた.入院12日目のCT検査で入院時のCT検査では認めなかった弓部大動脈の拡大,動脈壁の膿染,周囲への液体貯留を認め感染性弓部大動脈瘤が疑われた.血液培養再検査では培養陰性となり感染は制御傾向にあった.治療としては,まずは抗菌薬を変更し引き続き感染制御に努めた.しかし,入院14日目に新たに嗄声が出現し背部痛と左肩痛の増悪を認め,CT再検査では弓部大動脈は最大短径66 mmへと急速拡大を認めた.感染性弓部大動脈瘤切迫破裂と診断し,緊急手術を施行した.手術は,胸骨正中切開および左前方腋窩切開(左第4肋間開胸)アプローチ下にリファンピシン浸漬人工血管による上行弓部下行大動脈置換と大網による人工血管の被覆を行った.術後,感染は制御され再燃なく良好に経過している.肺炎球菌を起炎菌とする急速拡大した感染性弓部大動脈瘤の稀な症例を経験した.感染巣を徹底的に除去し,リファンピシン浸漬人工血管による大動脈置換と大網による人工血管の被覆を行い,感受性のある抗菌薬治療を継続したことで,感染を制御でき良好な成績を得た.

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