日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
心臓手術後に一時的心外膜ペーシングワイヤーが上行大動脈内に迷入した1例
牧田 哲丸山 俊之
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2015 年 44 巻 6 号 p. 350-353

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抄録

症例は77歳,女性.2カ月前に,重度のARと心房細動に対しAVR(CEPMagnaEASE19 mm)左心耳切除,肺静脈隔離術を施行した.手術時,一時的心外膜ペーシングワイヤーを右室前面に縫着した.術後8日目に一時的心外膜ペーシングワイヤーを抜去しようと試みたが抵抗があったため,皮膚の高さでワイヤーをカットし心のう内に遺残させた.術後20日目に自宅に軽快退院となったが,退院後10日頃より発熱が出現し,16日目に胸部正中創の発赤と疼痛のため再受診となった.CTで胸骨周囲の浮腫性変化を認め,胸骨周囲の蜂窩織炎と診断し入院加療となった.抗生剤治療開始により,速やかに解熱し,炎症反応も陰性化し,創部の発赤,疼痛も消失した.入院時のCTで初回手術時に右室前面に留置した一時的ペーシングワイヤーのうち1本が上行大動脈内へ迷入していることが確認された.入院後14日目に外科的にワイヤーを摘出した.ワイヤー周囲には感染を疑わせる所見は認めなかったが,胸骨には感染所見があり,胸骨切除大網充填術を同時に施行した.手術後6週間の抗生剤治療を施行した後,自宅に軽快退院となった.心嚢内に遺残した一時的心外膜ペーシングリードが大動脈内へ迷入することは非常に稀であり,報告する.

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