2017 年 46 巻 5 号 p. 247-250
症例は69歳女性で,1973年(26歳時)に他院にてリウマチ性僧帽弁狭窄症に対してBjörk-Shiley弁を用いた僧帽弁置換術が施行された.当院循環器科で経過観察をはじめた2012年にはすでに,中等度の僧帽弁閉鎖不全症(MR)が出現していたが,今回急激に心不全が進行しショック状態に陥ったので,緊急手術を施行した.術中所見ではBjörk-Shiley弁の傾斜円盤ディスクは弁座より完全に外れ消失していた.Björk-Shiley弁,特にDelrin製の弁は耐久性に問題があり,ディスクの摩耗による人工弁機能不全の報告が散見されるが,ディスクの完全逸脱の報告は稀である.今回,術後43年目にディスク破損により重度僧帽弁閉鎖不全症をきたした1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.