2017 年 46 巻 6 号 p. 288-291
僧帽弁形成術におけるsystolic anterior motion(SAM)は,いまだに経験される合併症で対応に時として難渋する.今回初回形成術後SAMを呈し,再形成術を行った症例を経験したため報告する.症例は56歳女性.腱索断裂による後尖逸脱,僧帽弁閉鎖不全症に対し僧帽弁形成術を施行した.右側左房切開でアプローチすると,P3の腱索断裂を認め,P3弁尖は27 mmと高く広範囲が逸脱していたため,P3のhourglass-shaped resection+P3交連側の人工腱索再建術を施行した.弁輪縫縮にはringを使用せず,commissural band annuloplastyを同時施行した.術中の経食道心臓超音波検査でSAMを認め,カテコラミン中止,volume負荷を行ったが改善なく再形成の方針とした.P3は17 mmの高さが残っており,人工腱索をclear zoneに近い部位に建て直し,プロリン糸の連続縫合でP3弁尖基部を弁輪に縫縮するheight reductionを行った.遮断解除後SAMは消失し,遺残逆流なく手術を終了した.人工腱索の位置変更,height reductionは短時間で行えるSAMに対する有効な再形成術であった.