2017 年 46 巻 6 号 p. 311-315
症例は74歳男性.21年前(53歳時)に胸部下行大動脈瘤破裂を来し,A病院よりB病院に緊急搬送され下行大動脈人工血管置換術を施行された.19年前(55歳時),人工血管中枢側吻合部に仮性動脈瘤形成を認め,A病院にてMatsui-Kitamuraステントグラフト(MKSG)を用いた胸部大動脈ステントグラフト内挿術(TEVAR)を施行された.以降3年ほどはA病院に通院しフォローアップを受けていたが,その後は通院を自己中断していた.今回,近医にて施行された造影CTにて胸部下行大動脈瘤内へのエンドリークを指摘され,精査加療目的に当科紹介となった.精査の結果,MKSGおよび人工血管の破損によるtype IIIエンドリークと診断,追加TEVARを施行した.ディバイスはRelay Plusを選択,MKSGおよび人工血管の全長をカバーするためZone 3からTh11まで広範に内挿した.手術時間は94分,輸血は必要としなかった.術後経過は良好で,術後5日目に施行した造影CTにてエンドリークの消失を確認し,術後9日目に独歩退院となった.術後遠隔期におけるMKSG破損の報告は非常に稀であり,文献的考察を加えて報告する.