2018 年 47 巻 3 号 p. 109-112
特異な経過を呈した感染性粘液腫の1例を経験したので報告する.症例は62歳,男性.発熱と僧帽弁に腫瘤像を認め,疣贅を伴う感染性心内膜炎の診断で入院した.出血性脳梗塞を合併したため保存的加療を開始したところ,第6病日の心エコーにて腫瘤像の急速な増大を認めた.入院後にも新たな出血性脳梗塞を認めていたが,感染のコントロールが得られず,感染巣の掻爬と塞栓の予防を目的に第16病日に手術を施行した.術中所見では疣贅と考えていた腫瘤は僧帽弁後尖より生じた粘液腫で,腫瘍から連続して弁輪部から左心室に膿瘍が波及していた.感染巣の掻爬後に自己心膜で弁輪補強し,機械弁による人工弁置換術を施行した.術後は抗生剤治療を6週間継続し,リハビリ目的に独歩転院となった.