2018 年 47 巻 5 号 p. 224-227
心臓悪性腫瘍および左房壁内血腫は非常に稀である.今回われわれは,左房壁内血腫摘出10カ月後の左房腫瘍再発で平滑筋肉腫と診断された症例を経験したので報告する.症例は52歳女性で,呼吸困難を主訴に近医を受診し,経胸壁心臓超音波検査にて左房内に腫瘍を指摘されたため,手術目的に当院紹介となった.人工心肺下に腫瘍摘出術を施行し,術後の病理学的検査にて左房壁内血腫の診断となった.術後10カ月目に心不全を発症し,心臓超音波検査にて左房内腫瘍の再発,左房壁の全周性肥厚を認めたため,左房壁内血腫再発または左房内腫瘍の診断にて再手術を施行した.左房壁は全周性に白色肥厚・硬化しており,左房後壁に2 cm大の弾性硬の腫瘤が存在した.完全切除は困難と判断し,腫瘤と肥厚した左房後壁の一部のみを切除した.術後の病理学的検査では平滑筋肉腫の診断となった.術後は化学療法を行ったが,心不全コントロールに難渋し,再手術9カ月後に死亡した.