日本心臓血管外科学会雑誌
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[大血管]
Endovascular Aortic Repair 後 Capnocytophaga ochracea による感染性腹部大動脈瘤破裂の1例
岩﨑 義弘森田 雅文東 修平福原 慎二
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2021 年 50 巻 2 号 p. 124-127

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抄録

今回われわれは,Capnocytophaga ochraceaC. ochracea)を起炎菌とするEndovascular Aortic Repair(EVAR)後の腹部大動脈瘤破裂に対して,緊急開腹手術を施行し,救命できたので報告する.C. ochraceaは口腔内に常在する菌で,それによる感染症の報告は非常に稀で,C. ochraceaによる感染性動脈瘤,ステントグラフト感染の報告はいまだになく,貴重な症例と考える.症例は4年前に腎動脈直下の腹部大動脈瘤に対して,EVARを施行した77歳男性.齲歯の抜歯後2週間経過し,原因不明の発熱とCRP高値のため近医で抗生剤内服加療されていたが,改善なく,当院紹介受診となった.大動脈造影CTにて血栓化腹部大動脈瘤の急速な拡大とともに,瘤外への液体貯留を認め,感染による瘤壁の破壊が疑われたため,ただちに緊急開腹手術を施行した.術中所見としては,瘤内に多量の膿の貯留と瘤左側後方に4 cmの破裂孔を認め同部位から左後腹膜に膿の貯留を認めた.ステントグラフト感染も合併していると考え,ステントグラフトをすべて抜去し,感染瘤壁の除去,入念なデブリードメントを施行後,Y型人工血管置換術,大網充填術を施行した.瘤内の汚染組織,感染瘤壁より,C. ochraceaが検出されたため,術後6週間,抗生剤治療を行い,感染の再燃はなく,術後49日目に独歩退院となった.EVAR後のC. ochraceaによるステントグラフト感染,感染性動脈瘤については,今後注意すべき起炎菌の1つとして念頭に置くべきであろう.

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