日本心臓血管外科学会雑誌
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[先天性疾患]
低形成大動脈弁尖と大動脈壁の癒合による左冠血流障害に対する外科手術
小森 悠矢和田 直樹加部東 直広桑原 優大高橋 幸宏
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2021 年 50 巻 4 号 p. 244-247

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抄録

症例は4歳10カ月男児,出生時心疾患の指摘なし.4歳3カ月時,停留精巣の手術の際,啼泣後にST低下を伴う心電図変化が続き精査の方針となった.心臓カテーテル検査では,心機能は良好,有意な大動脈弁逆流も認めなかったが,左冠尖の低形成を認めた.大動脈造影では,左冠動脈への順行性血流が乏しく,右冠動脈からの側副血管により逆行性に造影されていた.造影された左冠動脈自体には狭窄がなく,入口部に造影剤の貯留を認めていたため,弁尖による冠血流流入障害を考え,無症状ではあったが手術の方針となった.術中所見では,低形成の左冠尖が左バルサルバ洞を覆い隠すように大動脈壁に付着していることで,左冠動脈入口部への冠血流の流入障害を引き起こしていた.大動脈離断部から左冠動脈入口部直上にかけてパッチで拡大した.術後経過は良好であり,術当日に抜管した.翌日にはICUを退室した.術後経胸壁心エコーでは心機能は良好で,有意な大動脈弁逆流も認めず,左冠動脈の順行性血流も確認できた.POD11に退院した.術後半年で行った心臓カテーテル検査でも大動脈弁逆流は認めず,左冠動脈には有意な狭窄はなく,右冠動脈からの逆行性血流も消失していた.稀少な症例を経験したので報告する.

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