2021 年 50 巻 5 号 p. 328-332
症例は75歳男性.背部痛と発熱を主訴に当院を受診された.造影CTで右側大動脈弓,左鎖骨下動脈起始異常を伴うKommerell憩室を認め,憩室部分に起因する偽腔閉塞型の大動脈解離を発症していた.Kommerell憩室は著明に拡大しており,手術適応と判断して待機的に手術を行った.手術は胸骨正中切開で,全弓部大動脈人工血管置換術,frozen elephant trunk法,胸部下行大動脈ステントグラフト内挿術を1期的に施行した.正中開胸により良好な視野で手術ができ,ステントグラフトを追加することで良好な結果を得たので,若干の文献的考察を加えて報告する.