2023 年 52 巻 6 号 p. 412-416
子宮頸癌からの心臓転移の症例は稀である.左鎖骨上リンパ節転移のため放射線治療を受けていた子宮頸癌の54歳女性の症例を報告する.患者は息切れを主訴に来院した.経胸壁心エコーで右室内に大きな腫瘤を認め,巨大腫瘤陥頓による突然死を防ぐため,準緊急手術を行った.冠動脈の後下行枝と左前下行枝に平行に右室を切開し,心内腫瘤を切除した.切除により,右室流出路閉塞や周術期の肺塞栓を予防し,死に至る可能性を回避した.心内腫瘤は子宮頸部扁平上皮癌であると診断し,退院後化学療法を施行した.術後3カ月目に行った心エコー検査で心臓転移の再発を認め,5カ月後に患者は死亡した.右室への心臓転移は,肺塞栓として現れることがある.稀ではあるが,子宮頸癌の心臓への転移のほとんどは,患者の予後がきわめて不良である.