抄録
症例は73歳の男性.下壁急性心筋梗塞発生後6日目に心室中隔穿孔と乳頭筋断裂による三尖弁閉鎖不全を合併した.心不全症状がしだいに悪化し,梗塞発生後25日目に手術を施行した.手術は心室中隔穿孔部をフェルト補強により直接閉鎖し,また左室梗塞部切除後はDacronパッチにウシ心膜を裏打ちしたものを用いDaggettの方法に準じて閉鎖した.三尖弁は中隔尖を温存し,Carpentier-Edwards弁にて三尖弁置換した.術後38日目に退院した.かかる症例はきわめてまれであり,文献上第1例目と思われるので報告した.