1992 年 21 巻 5 号 p. 510-514
不整脈原性右室異形成 (ARVD) による難治性心室頻拍発作を有する47歳の男性に対し, 体外循環心停止下に, 右室の病巣心筋切除と冷凍凝固術を行ったところ, 術後重症の右心不全をきたした. 薬物療法, IABPによる機械補助を行ったが右心不全が進行性であったのでヘパリンコーティングチューブとローラーポンプによる右心バイパスを行った. 右心バイパスにより全身循環は劇的に改善し, 肝, 腎, 呼吸機能などは良好に維持された. 最終的には, 右心機能の回復が不十分で, 右心バイパス離脱の試みの後全身状態が悪化し第21病日に多臓器不全で死亡した. しかし5日目ごとに回路の交換を行うことで少なくとも2週間は全身臓器循環を良好に維持しえた. したがって, この補助循環システムは短期間の右心補助に有効な方法と考えられる.