日本心臓血管外科学会雑誌
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長期にわたり消費性血液凝固障害を合併した腹部大動脈瘤の1手術治験例
芳村 直樹岡田 昌義山下 長司郎太田 稔明安宅 啓二中桐 啓太郎
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1993 年 22 巻 2 号 p. 138-141

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抄録

症例は71歳の男性で主訴は腹部拍動性腫瘤である. 1989年2月, DeBakey IIIa型解離性大動脈瘤が発生した際, 真性腹部大動脈瘤の併存が発見された. 1990年3月, 血尿を主訴とするDICが発症したが, 内科的治療にて症状は軽快した. その後, 1991年から1992年にかけて腹部大動脈瘤の拡大傾向を認めたため, 手術目的にて当科入院となった. 術前検査所見では血小板数10.7×104/mm3, APTT 35.4秒,PT 12.5 (11.2) 秒, トロンボテスト64%, フィブリノーゲン152mg/dl, FDP 118.7μg/ml, アンチトロンビン (AT) III 90%であった. 動脈瘤は最大径8cmで, 腎動脈下で著しく前方に突出し, 蛇行していた. Y型人工血管を用いて腹部大動脈を置換したが, 術中とくに出血傾向はみられなかった. 術後は血小板数23.1×104/mm3, フィブリノーゲン451mg/dl, FDP 47.7μg/ml, AT III>100%と, それぞれ検査所見の改善を認め, 術後32日目に軽快退院した.

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