1993 年 22 巻 4 号 p. 322-327
Stanford B型大動脈解離の急性期症例61例に保存的内科治療を優先する方針のもとに治療を行い, このうちの非手術症例48例を対象として, 発症早期の大動脈径と解離腔の血栓閉塞の有無が, 本症の遠隔予後や残存解離腔の運命に与える影響について検討を行った. 経過中, 手術を必要とせず生存退院しえた症例は, 解離腔血栓閉塞例 (T型) の92%, 開存例 (P型) の61%で, P型では手術症例や病院死が多かった. 発症時大動脈径はP型がT型よりも大きく, 経過中拡大傾向を示したが, T型は縮小傾向を示した. 遠隔予後をみると, 生存曲線からはT型とP型で有意差はなく, 発症時の大きい大動脈径, 真性胸部大動脈瘤の存在などが予後に影響する因子として重要であった. 残存解離腔の改善率はT型がP型より有意に良好で, また解離腔の改善例の予後は, 非改善例よりも良い傾向にあった. 以上より, 現在のP型の治療方針については再考を要すると考えられた.