日本心臓血管外科学会雑誌
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求心性肥大を示す大動脈弁狭窄症の術後拡張期心機能
大動脈弁閉鎖不全症との比較
夏秋 正文伊藤 翼吉戒 勝内藤 光三中山 義博上野 哲哉湊 直樹堺 正仁
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1993 年 22 巻 5 号 p. 387-393

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抄録
求心性肥大心筋大動脈弁狭窄症 (AS) の術後拡張期心機能について検討を加えた. 検討方法は心プール左室容量曲線およびその一次微分により収縮期指標として左室駆出率 (LVEF, %), 最大駆出速度 (PER, %EDV/sec), 拡張期指標として最大充満速度 (PFR), 拡張早期最大充満速度 (1/3PFR) を検討した. 術後駆出期指標はAS群では著明に改善し, 術前の afterload の異常に高い例でも術後は明らかな改善を示した. これに対し大動脈弁閉鎖不全症 (AR) では術後駆出期指標は低値を示した. 術後の拡張期心機能指標を示す最大充満速度は, 術後AS群は改善を認めたが, AR群ではコントロールに比べ低値を示した. 術後の拡張早期指標を示す1/3PFRはAS, AR群ともに正常コントロールに比べ低値を示し, とくにAS群のなかでも左室内径狭小かつ中隔壁厚の増大した例の1/3PFRは術前より低値を示した. 以上のように求心性肥大AS例では術後最大充満速度および駆出期指標の改善を認め, AS21例の遠隔成績も良好であり, われわれの施行した再灌流障害を軽減させる方法は, 術後良好な心機能を示した. ただしAS例の左室内径狭小壁肥厚例では心筋逸脱酵素の上昇と術後拡張早期能の低下を合併しており, 心筋保護法の一層の改良が必要と思われた.
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