日本心臓血管外科学会雑誌
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腎癌の下大静脈内腫瘍塞栓に対する手術術式の検討
とくに体外循環使用の意義について
山下 長司郎莇 隆吉田 正人安宅 啓二岡田 昌義
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1995 年 24 巻 4 号 p. 227-231

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抄録
下大静脈内腫瘍塞栓のため腎摘出後下大静脈の形成術を行った症例は23例であった. 腫瘍塞栓が腎静脈付近に限局していた15例では, 塞栓の中枢側と末梢側のIVCを遮断した後, バルーンカテーテルまたは指を用いて摘出した. 塞栓が肝部下大静脈および右房近傍まで進展した8例では胸骨縦切開を追加し, 部分体外循環下に塞栓を摘出した. IVCの再建方法は12例に直接縫合, 10例にパッチ形成術, 1例に人工血管置換術を行った. 術前より遠隔, 局所リンパ節転移あるいは腎被膜外浸潤のあった8例は1年以内に死亡したが4年以上生存が4例あり3年生存率37.5%, 5年生存率18.8%であった. 結論1) 腎癌の下大静脈腫瘍塞栓が肝静脈流入部まであり, 下大静脈の最大径が40mm以上のときは静脈壁の浸潤が予想され, 摘出時に体外循環を応用する方が出血をコントロールでき安全である. 2) 術前に遠隔転移, 局所リンパ節転移や腎被膜外浸潤の認められない症例では長期生存が得られ, 本術式は有意義と考えられた.
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