抄録
右人工股関節置換術後に急性動脈閉塞症を伴って発生した右仮性大腿動脈瘤の1例を報告した. 症例は59歳, 女性. 関節リュウマチによる変形性股関節症に対して行われた右人工股関節置換術2か月後に急性動脈閉塞を起こし, 右下腿切断となり, その後より右鼠蹊部に拍動性腫瘤を生じ, 当院へ紹介入院した. 人工骨頭が前内側へ偏位し, 骨頭のセメントが変形し, 右大腿動脈を損傷し仮性動脈瘤が生じ, 瘤内に形成された血栓により右下肢動脈の血栓塞栓症を引き起こしたものと思われた. 股関節置換術においては解剖学的には大腿動脈損傷が十分起こりうることを認識すべきである.