2000 年 29 巻 5 号 p. 305-308
教室における過去10年間の腹部大動脈瘤症例160例中, 78例を開腹到達法 (TP群), 82例を腹膜外到達法 (EP群) で施行した. このうち下腸間膜動脈, 腎動脈, 下肢末梢動脈など合併再建のない, TP群42例, EP群40例を対象とし比較した. 手術時間, 術中出血量, 術中および術後輸血量は両群間に差はなかったが (TP群: 328.1分, 965.9ml, 633ml, EP群: 359.5分, 1,020ml, 420ml), 術後, 経口摂取開始までの期間, 補液を必要とした期間はTP群に比べEP群で有意に短く (TP群: 9.9日, 15.7日, EP群: 6.6日, 10.4日), 腹膜外到達法は早期離床のために有用であると考えられた. 術後合併症のうち, 腹壁瘢痕ヘルニアはEP群に有意に多く, 後腹膜乳糜漏, 後腹膜液貯留はEP群にのみ生じたが, 手術手技の習熟により回避され得ると考えられた.