2002 年 31 巻 6 号 p. 408-410
症例は71歳,男性.胃癌にて幽門側胃部分切除術の既往あり.早期食道癌と診断され放射線治療を行ったが,再発を認め,食道抜去術,胸骨前経路による食道再建術が予定された.術前評価で左前下行枝,右冠状動脈の高度狭窄を認め,冠状動脈バイパス術(CABG)の適応となった.左第5,7肋間開胸により大伏在静脈のYグラフトを用い,下行大動脈をinflowとする2枝off-pump CABGを施行した.吻合にはCTSスタビライザー,心尖部吸引リトラクターを用いて術野を展開した.手術時間は220分で,手術室気管内チューブ抜管し,同種血輸血は行わなかった.術後7日で経過良好にて退院した.左開胸off-pump CABGは,本例のような食道癌患者に対して,食道再建予定経路を回避することで,癌に対する治療にも支障をきたすことなく,安全に行うことが可能であった.