2003 年 32 巻 5 号 p. 267-271
大動脈解離手術において,吻合部の補強ならびに解離腔の血栓化を期待し,末梢側吻合にelephant trunk(ET)法を応用した手術を行った.対象は1995年1月から1999年12月までの24例で,術後解離腔内血栓化の有無および大動脈径の推移について検討した.手術はStanford A型19例には弓部全置換術を,Stanford B型5例には下行大動脈置換術を施行した.術後全例でET外側の解離腔内血栓化を認め,吻合部での解離腔への血流リークを認めなかった.また18例(75.0%)では横隔膜部の下行大動脈までの解離腔内血栓化を認め,さらに瘤縮小傾向がみられた.このことから吻合部の補強として有用であるとともに,遠隔期に下行大動脈以下の追加手術が減少する可能性があり,本法は大動脈解離における有用な手術法であると思われた.