日本心臓血管外科学会雑誌
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凝固線溶活性からみた人工弁置換術後の至適抗凝固療法の検討
小長井 直樹矢野 浩己前田 光徳工藤 龍彦石丸 新
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2004 年 33 巻 1 号 p. 9-12

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抄録

人工弁置換術後の患者は,一生涯warfarinによる抗凝固療法が必要となるため,出血性合併症を生じずに血栓塞栓症を予防できる至適warfarin治療域の設定が必要である.当センターにて定期的外来加療を受けている機械弁による単弁置換137例を対象として,人工弁置換術後の抗凝固療法を凝固線溶活性の面から検討した.凝固活性の指標としてTAT (thrombin antithrombin III complex)を,線溶活性の指標としてFDPとD-dimerを測定したところ,PT-INR目標値1.5~2.0では,TAT3.0ng/ml以上の高値を示す症例は30例であった.この30例は抗凝固療法不良のため凝固活性が亢進していると考え,PT-INR目標値を2.0~2.5に強化して凝固線溶活性を再検討した.PT-INRは1.63±0.27から2.25±0.44へ有意(p<0.01)に上昇し,TATは7.58±6.65から2.81±2.80ng/mlへと有意(p<0.01)に低下して正常範囲に入った.FDP,D-dimerもそれぞれ低下して,凝固線溶活性が抑制されたことを示した.人工弁置換術後の抗凝固療法は,出血性合併症を生じずに凝固線溶活性を正常化させる最低限のwarfarin投与量を設定することが重要であり,われわれはPT-INR2.0~2.5を推奨する.

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