日本心臓血管外科学会雑誌
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Off-pump CABG術後に発症した非閉塞性腸管虚血の1例
花田 智樹大保 英文森本 直人松久 弘典圓尾 文子南 裕也中桐 啓太郎吉田 正人向原 伸彦志田 力
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2004 年 33 巻 2 号 p. 94-97

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抄録

症例は81歳,女性.不安定狭心症に対するoff-pump CABG術後に腹痛を生じ,術翌日の腹部X線およびCTにて麻痺性イレウスの所見を認めた.緊急試験開腹術を行ったが,腸管には明らかな虚血を認めなかった.以後も腹痛が改善しないため,腹部血管造影を行ったところ,上腸間膜動脈(SMA)の高度の攣縮を認めた.このため非閉塞性腸管虚血(nonocclusive mesenteric ischemia: NOMI)と診断し,SMAへの塩酸パパベリン持続動注を開始した.動注開始後,血管造影では攣縮の著明な改善を認めたが,12日目に腸管壊死による穿孔性腹膜炎を生じたため,広範囲小腸切除,S状結腸切除を余儀なくされた.腸切除後は呼吸不全のため人工呼吸器からの離脱が困難となり,約5ヵ月後に多臓器不全にて死亡した.人工心肺を使用しないoff-pump CABG術後でもNOMIを発症する可能性があるため,術中の良好な血行動態の維持,注意深い術後管理,早期診断,治療が必要と考えられた.

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