日本心臓血管外科学会雑誌
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌による心臓血管外科術後創感染のoutbreak,およびそのコントロール
梅末 正芳安藤 廣美福村 文雄長野 一郎朴 範子木村 聡田中 二郎岡松 秀一中村 権一吉田 るみ子
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2005 年 34 巻 1 号 p. 14-20

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抄録

2000年1月より12月上旬において153例の心臓血管外科手術を行い15例(9.8%)にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による術後創感染が発症した.創感染の内訳は,縦隔洞炎5例,表層創感染9例および腹部大動脈瘤術後人工血管感染1例であった.創感染はすべて6月以降に集中して発症しており,同時期に手術を施行した83例中有効なデータが得られた76例を対象に術前術中因子を検討した.また感染患者より検出されたMRSAおよび医療従事者が保菌していたMRSAにつきパルスフィールド電気泳動法を用い遺伝子解析を行った.多変量解析によりMRSA感染の危険因子は,性別(男性),糖尿病の合併,緊急手術であった.縦隔洞炎発症5例のうち1例は術前の喀痰よりMRSAが検出されている症例であった.MRSAの遺伝子解析では創感染患者より少なくとも2種類のMRSA株を検出し,そのうちの1株は医師が鼻腔内に保菌していた株と同一株であった.感染予防対策として術前患者のMRSA保菌検査および保菌患者に対するムピロシンを用いた術前除菌,MRSA感染患者および保菌者の術前患者からの分離,MRSA保菌医療従事者の除菌,処置前後での医療従事者の手洗いの徹底,ほか米国疾病予防局の手術部位感染防止ガイドラインに準じた対策を講じた.上記感染予防対策導入後113例の心臓血管外科手術を行いMRSAによる術後創感染は1例(0.9%)のみであった.

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