2005 年 34 巻 6 号 p. 418-421
症例は65歳,男性.CABGの7ヵ月後に両上肢痛を主訴としたA型解離を発症した.開胸によるRITAグラフト損傷を危惧し保存的治療を選択したが,アシドーシス,上肢痛が軽快せずエコーで腸管虚血も認めたため,緊急で左総腸骨動脈-上腸間膜動脈バイパス(大伏在静脈),両側腋窩動脈断端形成を施行した.アシドーシス,上肢痛とも軽快し経過良好であったが,1週間後突然胸痛,血圧低下を認め,心タンポナーデと診断した.緊急で上行大動脈置換,大動脈弁吊り上げ,橈骨動脈グラフト再建を行った.術後経過は良好であった.本症例では臓器虚血に対する治療をcentral operationより優先して行い,不可逆的な臓器虚血を防ぐことができた.また,壊死にいたる前の腸管虚血がエコーで診断でき,CTによる「開存」の診断のなかに虚血がありうることが明らかとなった.