日本心臓血管外科学会雑誌
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非細菌性血栓性心内膜炎を呈し大動脈弁置換術を施行した,卵巣癌によるTrousseau症候群の1例
佐藤 久樗木 等内藤 光三柚木 純二
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2006 年 35 巻 2 号 p. 102-105

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抄録
症例は45歳,女性.突然の左上下肢麻痺,左下腹部痛を主訴に来院した.両側卵巣腫瘍と,右頭頂葉,肝臓,脾臓,腎臓に梗塞巣を認めた.胸部X線写真で心拡大を認め,心エコー検査で大動脈弁に疣贅と,IV度の大動脈弁閉鎖不全を認めた.感染性心内膜炎と卵巣癌の疑いで準緊急で大動脈弁置換術と両側付属器切除術を施行した.大動脈弁の表面に疣贅を認めたが,弁尖はほぼ正常であった.病理所見において,疣贅はフィブリンが主体で炎症性細胞浸潤や細菌は認めなかった.術後経過は良好で,神経学的異常も改善し,術後13日目に軽快退院した.Trousseau症候群による非細菌性血栓性心内膜炎の症例は,非常にまれであり,若年者で悪性腫瘍を合併する脳梗塞患者においては,本症を考慮すべきである.
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