抄録
症例は64歳,男性.1995年からの慢性透析症例.1996年10月に冠動脈バイパス術(CABG,4枝)を施行されていた.2005年5月胸痛により発症し,急性心筋梗塞の診断で当科入院となり,内科で緊急心臓カテーテル検査を施行した.右冠動脈が責任病変と考えられたが,石灰化が強くカテーテル治療は困難であり,大動脈内バルーンパンピングを開始した.準緊急的に手術を行った.手術は大伏在静脈を用い,脾動脈から#4PDと#4AVへsequentialで経横隔膜的にOPCAB(off-pump CABG)を行った.術後,症状および心機能は改善し,第15病日退院となった.経横隔膜的OPCABで脾動脈をinflowとしたものはまれであり,この方法は右冠動脈病変に対し,再手術症例や石灰化で大動脈からinflowをとれない症例において奏功すると考えられる.