日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
新しい人工血管(UBE woven graft 150cc WYK type)の使用経験
シールドグラフトとの比較・検討
札 琢磨井上 剛裕西野 貴子藤井 公輔岡本 順子岡本 腱松本 光史中本 進北山 仁士佐賀 俊彦
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 35 巻 6 号 p. 319-323

詳細
抄録
シールドグラフトの改良は目覚しいが,コーティング剤による免疫反応として,術後の発熱,炎症反応の遷延など,功罪を認めるのも事実である.2005年1月からノンシールドウーブングラフト(UBE woven graft 150cc WYK type)が発売され,preclottingは不要で操作性の向上が図られている.2005年1月から2006年1月までの待機的腹部大動脈瘤と総腸骨動脈瘤に対し,腹部大動脈人工血管置換術を施行した50例を対象とした.ノンシールドウーブングラフトをU群(UBE woven graft 150cc WYK type群,26例),シールドグラフトをI群(INTERGARDTM woven Y graft群,24例)に分類し,比較検討した.U群は120ml/cm2/min/120mmHgのmild porosity,I群は5ml/cm2/min/120mmHgのほぼzero porosityであるが,術中出血量に有意差を認めなかった.CRP(mg/dl)値は,術後7日でU群3.4±1.6:I群3.7±2.1,術後14日でU群1.5±1.1:I群1.7±1.4,37.5℃以上の再発熱例はU群12%:I群17%,術後入院期間はU群15.3±4.1日:I群19.7±12.2日(p=0.08)であった.両群間とも病院死亡を認めなかった.I群と比較して,U群はCRP値高値の遷延を低く抑え,再発熱は減少する傾向を認めた.術後の炎症反応の軽減,入院期間も短縮させる傾向にあり,組織適合性,操作性において手術成績を向上させると考えられた.しかし,観察期間が短いため中期,遠隔期の再評価が必要である.
著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top