日本心臓血管外科学会雑誌
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DeBakey I型急性大動脈解離術後にヘパリン起因性血小板減少症(HIT)を合併し治療に難渋した1症例
國重 英之明神 一宏石橋 義光石井 浩二岡 潤一
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2007 年 36 巻 4 号 p. 206-210

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抄録

症例は73歳,男性.突然胸苦が出現し,CT施行で急性大動脈解離と診断され当院へ救急搬送された.解離は上行大動脈から両側総腸骨動脈にまでいたり偽腔は開存していた.来院時,右大腿動脈触知不能で右下肢全体蒼白で疼痛・痺れを訴えており,右下肢全体の虚血を合併していた.緊急手術は選択的脳分離体外循環下上行置換+F-Fバイパス術を施行した.術後,虚血下肢再灌流による血行再建後症候群(MNMS)が発症し持続血液透析を開始した.術後3日目に脳梗塞・下肢F-Fバイパス閉塞を発症した.脳梗塞治療およびグラフト内血栓摘除術を施行し対応した.術後6日目に血小板数は1.1万まで著明に低下,ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)を疑いヘパリン中止,アルガトロバン投与を開始した.術後12日目での抗ヘパリン-PF4複合体抗体価は強陽性であった.以降,血栓塞栓症の増悪は認めず,血小板数も徐々に増加した.ワーファリン内服による抗凝固治療ののち,リハビリテーション治療目的に転院となった.ヘパリン使用時におけるHIT発症の可能性を念頭におき,その病態を認識し適切な治療法の選択により,重篤な血栓合併症を防止することが重要である.

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