2007 年 36 巻 4 号 p. 221-224
症例は50歳,男性.平成11年に当科でCABG(LITA-LAD,RA-RCA,SVG-OM-PL)を施行されていた.今回,急性I型大動脈解離を発症し緊急手術を行った.術前のCTで冠動脈バイパスはすべて開存していた.手術は再胸骨正中切開アプローチで,右腋窩動脈送血,上下大静脈の2本脱血で人工心肺を確立したのち,超低体温循環停止(直腸温23.6℃),逆行性脳灌流下に上行大動脈置換術を行った.心筋保護は間歇的逆行性冠灌流を使用した.RAおよびSVGは無傷であったため動脈壁ごと一塊に島状に切離して人工血管壁に再吻合した.人工心肺からの離脱は容易であり術後の心機能も問題なかった.また,術後の胸部CTで冠動脈バイパスの開存を確認できた.冠動脈バイパス術後遠隔期に発症した急性I型大動脈解離に対して超低体温循環停止と間歇的逆行性冠灌流を用いて良好な心筋保護が得られ,かつ再建を工夫することですべてのグラフトを温存することができた.