抄録
症例は83歳,女性.心タンポナーデに伴うショックの診断で当院へ搬送された.心電図所見,心筋逸脱酵素の上昇から急性心筋梗塞とそれに伴う左室破裂と診断し,心嚢ドレナージを施行した.その直後にblow out型の左室自由壁破裂をきたしPEA(pulseless-electrical-activity)となったため,ただちに胸骨正中切開により心臓に到達し,左室後側壁の破裂孔からの噴出性出血を確認,gelatin-resorcinol-formaldehyde(GRF)glueによる圧迫止血を開始した.圧迫のみでは止血できなかったが,当初は脆弱で縫合困難と思われた破裂孔付近の梗塞心筋が,圧迫後はGRF glueによると思われる変性で強度が増したため,容易に縫合止血しえた.心不全管理に時間を要したが,術後103日目に軽快退院した.GRF glueによる組織壊死の報告があり,今後も厳重な経過観察が必要ではあるが,救命困難な本症に対する緊急手術の術式として,有効と考えられた.