抄録
症例は74歳,女性,主訴は労作時息切れ.心臓超音波検査では左室壁運動は良好であり(LVELF70.2%),左房左室の拡大を認めた(LAD53.4mm,LVDd58.5mm).僧帽弁は後尖の肥厚,可動性の低下を認め,弁輪にエコー輝度の増強する部分を認めた.カラードップラーでは,左房後尖側に向かう逆流jetを認めたが,前尖の逸脱は認めなかった.高度僧帽弁閉鎖不全症の診断で手術施行した.僧帽弁を観察すると限局した後尖弁輪の石灰化によって後尖P2が短縮しており,この部位が逆流の原因と考えられた.弁尖矩型切除,弁輪縫縮による僧帽弁形成術を施行した.術後経過は良好であり,術後の心臓超音波検査で僧帽弁閉鎖不全はtrivialまで改善していた.弁輪石灰化を伴う僧帽弁閉鎖不全症に対しては,形成術は不向きとされていたが,本症例のように石灰化が限局している症例に対しては弁尖切除,弁輪縫縮によって形成術は可能であると考えられた.