災害診療記録/J-SPEEDは、日本の災害医療チームが使用する診療記録および報告の標準様式である。同様式は2011年東日本大震災の教訓に基づき「災害時の診療録のあり方に関する合同委員会」によって提唱され、様式の活用により被災地における継続診療とデータに基づく医療資源配分が可能となる。同様式は熊本地震や西日本豪雨などの自然災害の医療救護現場で広く実用され、近年は自然災害以外の平時でも活用されており、平時と有事を繋ぐ診療情報管理手法となりつつある。本稿では、災害診療記録/J-SPEEDのこれまでの展開に加え、J-SPEED公式サイトの利用による同様式の運用方法を紹介する。災害対応に携わる多くの関係者の災害診療記録/J-SPEEDの活用によって、救急・災害医療関係者でシームレスな診療情報管理が実現され、医療関係者が災害医療に参加しやすい環境が構築されていくこと、データ活用により被災傷病者への診療の質が向上することが期待されている。