2024 年 29 巻 2 号 p. 161-169
世界中で自然災害・人的災害が頻度を増す一方で、災害医学研究は未だ発展途上である。その原因として、ヒト・モノ・情報が不足するという災害特有の条件に加え、現場重視の風潮により論文化へのインセンティブが働きにくいこと、災害横断的な比較定量が難しいこと、災害時に研究を行うということにつき被災地住民の理解を得にくいことなどが挙げられる。このような背景を鑑み、日本災害医学会では2022年に「学会主導研究委員会」が発足した。本委員会では日本の災害研究の推進のため、2023年に岩手で開催された第28回日本災害医学会学術集会において、委員会企画「災害医学研究をしたくなる!」を開催し、学会員に広く研究への参画を呼び掛けた。本稿はこの会の内容のうち、災害医学研究の機会と重要性を述べた総論部分を抽出・要約し、災害対応を単なる経験則として留めることなく学問として共有していくことの重要性につき考察するものである。