日本災害医学会雑誌
Online ISSN : 2434-4214
Print ISSN : 2189-4035
体験レポート
薬剤師の専門性を活かしたウクライナ人道危機に対する現地での医療救援
仲里 泰太郎 河合 謙佑池田 載子光森 健二中出 雅治小林 政彦
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2025 年 30 巻 4 号 p. 155-161

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抄録

ウクライナ人道危機の激化に伴う国内避難民の増加により、ウジュホロド市の医療体制はひっ迫した。国際赤十字赤新月社連盟とウクライナ赤十字社はウジュホロド市にEmergency Clinic (EC)を展開し対応、筆者は薬剤師としてECの構築および業務支援を担当した。特に、医薬品の品質を保証する期限管理や保管条件の維持、患者への安全な提供を担保する運用の徹底において、薬剤師の専門性が不可欠であった。本活動は直接診療を行う形態ではなく、WHOの緊急医療チーム(EMT)分類におけるSpecialized Care Teamの目的の1つである技術支援に合致する「支援型EMT」と言える体制を結果的に採用した点が特徴であった。これにより持続可能かつ現地に根差した医療支援が実現できた。本稿ではこの状況下で薬剤師の専門性がどのように発揮されたかを明らかにし、今後の国際医療支援活動への可能性を探る。

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