抄録
アルコキシ基およびクロル基のような加水分解反応性の異なる官能基をもつ各シランで処理したガラス面, ならびにそれらシランで処理したガラス面とレジンの接着試験後のガラス側破断面の状態を走査型電子顕微鏡, 走査型トンネル顕微鏡, ラマン分光光度計および高感度反射赤外分光光度計により分析し, シランの加水分解性基の違いによる処理効果の差を解析した.
その結果, 加水分解性官能基に反応性の高いクロル基をもつ三官能性シランは, 材料表面のシラノール基や水により, 速やかに加水分解に続き縮合反応し, 多分子層を形成し, 材料表面上を均一に覆う.それらの処理剤で処理されたガラス面に対するレジンの接着強さは高く, 熱サイクル2, 000回後の接着試験における破断は, 処理層内もしくは接着材レジンの凝集破壊であった.一方, アルコキシ系シランの加水分解に続く縮合反応性は低く, 接着試験後の破断は, 材料/処理層間の界面破壊が主体と考えられた.